キャデラック・エスカレードのエンジン
走行距離わずか6kmで故障
エンジンに致命的な問題

世界の超大型SUV市場で最強とされる車は間違いなくキャデラック・エスカレードだろう。リンカーンのナビゲーターやシボレー・タホなど競合車は多いが、一般消費者が手に入れられる中で最も高級感のある車と見られている。しかし、このエスカレードが納車後わずか6kmでエンジン故障を起こしたことが明らかになり、物議を醸している。
実際、走行距離6kmというのはほぼ納車直後と言っても過言ではない。これは工場出荷前のテスト走行中にすでに故障していた可能性もあるが、さらに問題なのは故障の深刻さだ。エンジンを完全に分解した結果、コネクティングロッドが破損し、その破片がエンジン内部に散乱していたという。いわゆる「エンジンが壊れた」状態がこれに当たる。


GMの複数モデルに搭載される
6,200cc V8 L87エンジン
問題のエンジンはGMの複数モデルに搭載されている6,200cc V8 L87エンジンだ。このエンジンはキャデラック・エスカレードやGMC・ユーコンなどに搭載されており、2021年から2024年モデルのシボレー・タホにも使用されていることが判明しており、多くのオーナーに不安を与えている。
エスカレードは日本市場でも販売されており、問題は深刻だ。販売台数は多くないものの、エンジンが突然故障する可能性があるという致命的な問題は、走行中に車が急停止する危険をはらんでいる。プレミアムモデルに搭載されるエンジンにこのような欠陥があることは、ブランドイメージに致命的な打撃を与える可能性がある。


米国道路交通安全局が調査開始
既知の慢性的な問題も抱えるエンジン?
前述の納車直後にエンジンが壊れたエスカレードの件とは別に、米国道路交通安全局(NHTSA)が調査を開始した。L87エンジンを搭載した車両で同様の症状や同じ部位の故障報告が相次いだためだ。いずれも高価な高級車であり、まるでロシアンルーレットのような状況だ。
さらに、このエンジンには既知の慢性的な問題があることも判明した。多気筒エンジンの燃費向上のため、低負荷時に一部気筒の作動を停止する可変気筒システムが採用されているが、このシステムの設計上の欠陥により、バルブリフターの動作不良が発生し、バルブリフターが固着してしまうという慢性的な問題が指摘されている。


米国での調査対象台数
87万7,710台に上る
米国での調査規模も明らかになった。2019年から2024年に生産されたシルバラード、シエラ、シボレー・タホ、キャデラック・エスカレードなど、計87万7,710台が調査対象となる方針だ。販売台数が多いため調査規模が膨大になっており、もしリコールが実施されれば、GMにとって大きな負担となるだろう。
コネクティングロッドはエンジン燃焼室の下部にある部品のため、リコールとなればエンジンを完全に取り外す必要がある。そのため、修理待ち時間が長期化し、消費者の不満が爆発的に増加することが予想される。国内市場で販売されたキャデラック・エスカレードに関するリコールや調査の情報はまだないが、メーカーに正確な確認を取る必要性が高まっている。